2025年の法改正により、ハラスメント防止措置はすべての企業にとって法的義務となりました。パワーハラスメント(パワハラ)やセクシュアルハラスメント(セクハラ)、マタニティハラスメント(マタハラ)に加え、2025年6月からはカスタマーハラスメント(カスハラ)対策も新たに企業の義務となり、中小企業も例外なく対応が求められています。
義務化の背景と法的根拠
労働施策総合推進法や男女雇用機会均等法の改正により、事業主には「雇用管理上必要な措置」を講じる義務が課されました。これは、職場におけるハラスメントを未然に防ぎ、発生時には迅速かつ適切に対応する体制を整備することを意味します。違反した場合、行政指導や企業名公表といった社会的制裁を受けるリスクもあります。
企業に求められる4つの基本措置
(1)方針の明確化および周知・啓発
「ハラスメントは許さない」という企業方針を明文化し、就業規則や社内規程に禁止規定と処分内容を明記します。経営トップからのメッセージ発信や社内研修・啓発活動を通じて、従業員全体に周知徹底することが重要です。
(2)相談体制の整備
ハラスメントに関する相談窓口を社内に設置し、担当者を明確にします。小規模企業では外部専門家や公的相談窓口の活用も有効です。相談者が安心して声を上げられるよう、プライバシー保護や匿名相談の仕組みも整えましょう。
(3)迅速・適切な事後対応
相談や苦情を受けた場合は、速やかに事実調査を行い、証拠を収集します。ハラスメントが認められた場合は、加害者への是正措置(注意・研修・懲戒処分など)や被害者への配慮措置(配置転換、休業、メンタルケア等)を実施し、再発防止策を講じます。
(4)不利益取扱いの禁止とプライバシー保護
相談したことや調査協力を理由とする解雇・降格・嫌がらせなどの報復は禁止されています。社内方針や人事担当者への注意喚起を徹底し、報復が発覚した場合は厳正に対処する旨も明記しましょう。
カスタマーハラスメント対策の義務化
2025年6月の法改正で、顧客からの著しい迷惑行為(カスハラ)に対する防止措置も企業に義務づけられました。方針の明確化や相談体制の整備、発生時の迅速な対応など、従来のハラスメント対策と同様の措置が必要です。特に顧客対応が多い業種では、現場の実情に即したマニュアルや研修の整備が不可欠です。
実効性ある運用のために
形式的な制度整備だけでは不十分です。従業員が実際に相談しやすい雰囲気づくりや、管理職への研修、定期的な社内アンケートなど、実効性を高める運用が求められます。厚生労働省や各都道府県労働局では、中小企業向けのマニュアルや研修動画、外部相談窓口の案内など、実務支援ツールも提供されています。
ハラスメント防止措置は、企業の法的義務であると同時に、従業員の安心と企業の信頼を守る経営課題です。当事務所では、就業規則の整備や相談体制の構築、研修プログラムの企画など、実情に即した実務対応をサポートしています。法令遵守と健全な職場づくりのため、ぜひご相談ください。