企業経営において、「予防法務」は今や不可欠な取り組みとなっていると言ってよいでしょう。予防法務とは、法的トラブルや紛争が発生する前に、リスクを洗い出し、適切な対策を講じておくことをいいます。
中小企業を含め、経営資源に限りがある企業ほど、トラブルが発生してからの対応（臨床法務）ではなく、未然に防ぐための予防法務が、安定経営と成長のカギを握ります。
なぜ予防法務が重要なのか
予防法務の最大のメリットは、企業の資源を無駄なトラブル対応に費やさず、本来の事業活動に集中できる点にあります。たとえば、契約トラブルや労務問題が発生して裁判に発展した場合、解決までに多大な時間と費用がかかり、企業の信用も損なわれかねません。予防法務を徹底していれば、こうしたリスクを大幅に低減でき、経営の安定と持続的な成長を実現できます。
また、予防法務はコンプライアンス体制の強化にも直結します。近年はハラスメントや情報漏洩、下請法違反など、社会的に注目される法的リスクが増加しています。これらのリスクに対し、社内規程や教育体制を整備し、従業員の法意識を高めることで、企業全体の信頼性向上にもつながります。
実践的な予防法務の取り組み
予防法務の実践には、以下のような具体的な取り組みが有効です。
（１）契約書の作成・リーガルチェック
取引先との契約書を精査することで、不利な条項や不明確な条件を排除し、トラブル発生時の対応策も盛り込むことができます。損害賠償や解除条件など、万一の際のルールを明確にしておくことが重要です。
（２）社内規程・コンプライアンス体制の整備
就業規則やハラスメント防止規程、情報管理規程など、従業員が守るべきルールを明文化し、周知徹底します。定期的な見直しと従業員研修も欠かせません。
（３）労務管理の徹底
労働契約書の整備、労働時間管理、法改正への迅速な対応など、従業員とのトラブルを未然に防ぐ体制づくりが重要です。問題社員への対応や、ハラスメント防止措置も含まれます。
（４）リスクの洗い出しと優先順位付け
企業の業種や規模、事業内容に応じて、法的リスクをリストアップし、重要度や発生可能性に応じて優先的に対応します。中小企業の場合は、まず頻度や影響の大きい分野から着手するのが現実的です。
（５）顧問弁護士の活用
法務部門を持たない中小企業でも、顧問弁護士と連携することで、日常的な法務チェックや相談体制を整えられます。専門家の視点を経営判断に取り入れることで、より確実なリスクコントロールが可能です。
予防法務は「守り」の法務にとどまらず、企業の競争力や成長戦略を支える「攻め」の経営基盤でもあります。トラブルを未然に防ぐことで、企業は安心して新たなチャレンジに取り組むことができ、事業拡大やイノベーションの推進にもつながります。
当事務所では、企業の実情に即した予防法務の構築と運用をサポートし、経営層の皆様が本業に専念できる環境づくりをお手伝いすることを目指しています。
