本日施行・障害者雇用率2.7%へ ―「うちは40人未満だから関係ない」がもう通用しない理由

法改正アラート / 企業の人事・総務の方へ

障害者法定雇用率が2.7%へ。
対象が「従業員37.5人以上」に広がりました。

「うちは関係ない」が通用しなくなる改正です。納付金・行政指導・企業名公表という法的リスクと、御社の必要人数を、弁護士が30分で整理します。

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本日2026年7月1日、民間企業の障害者法定雇用率が2.5%から2.7%へ引き上げられました。同時に、雇用義務の対象となる企業の範囲が、常時雇用労働者数「40.0人以上」から「37.5人以上」へと広がります。これまで「うちは規模が小さいから関係ない」と考えていた中小企業も、新たに義務の対象に入る可能性があります。

数字だけ見ると0.2ポイントの引き上げですが、経営の現場へのインパクトは小さくありません。

本稿では、弁護士の立場から「自社が対象になるのか」「未対応のまま放置するとどんな法的リスクがあるのか」「今週から何をすべきか」を、できるだけ実務に直結する形で整理します。

1. まず、自社が対象かどうかを再計算する

雇用すべき障害者の人数(法定雇用障害者数)は、次の式で求めます。

法定雇用障害者数 = 常時雇用する労働者の数 × 2.7%(小数点以下は切り捨て)

ここで注意すべきは「常時雇用する労働者の数」は、単純な在籍人数とは限らないという点です。週の所定労働時間が30時間以上の労働者は1人、20時間以上30時間未満の短時間労働者は0.5人として合算します。

たとえば週30時間以上が100人、短時間労働者が20人いる企業なら、常時雇用労働者数は110人。これに2.7%を掛けると2.97人となり、小数点以下を切り捨てて「2人以上」の障害者を雇用する義務が生じます。

これまで対象外だった常時雇用労働者数37.5人以上40.0人未満の企業は、この計算で新たに「1人以上」の雇用義務が発生します。また、すでに対象だった企業でも、人数規模によっては必要人数が増えることがあります。

まずは自社の正確な常時雇用労働者数を出し、必要人数を再計算すること。これが出発点です。

なお、建設・運送・医療福祉など一部の業種に認められてきた「除外率」は、2025年4月から一律10ポイント引き下げられています。該当業種の企業は、計算の前提が変わっている点にも注意が必要です。

2. 未対応のまま放置した場合の法的リスク

障害者雇用は「努力目標」ではなく、法律上の義務です。法定雇用率未達成それ自体に直ちに刑事罰が科されるわけではありませんが、未達成のまま放置すると、企業は段階的に重いリスクを負います。

第一に、障害者雇用納付金です。常時雇用労働者が100人を超える企業で雇用率を満たしていない場合、不足する障害者1人あたり原則として月額5万円(一定規模以下は月額4万円)の納付義務が生じます。1人不足が1年続けば原則として年間60万円の負担になります。

第二に、ハローワークによる行政指導です。雇入れ計画の作成命令などが出され、それでも改善が見られない場合には、最終段階として企業名の公表に至ることがあります。採用難の時代に、自社名が「障害者雇用未達企業」として公表される打撃は、納付金以上に深刻です。

第三に、見落とされがちですが毎年6月1日時点の障害者雇用状況をハローワークへ報告する義務があり、未報告や虚偽報告には罰則も定められています。加えて、障害者であることの把握・確認に当たっては、本人のプライバシーに配慮した慎重な運用が求められます。

3. 実務上の重要ポイント ―「今年は移行期間」を正しく理解する

ここは多くの解説が触れていない実務の勘所です。2.7%という新しい義務自体は本日7月1日から発生しますが、毎年6月1日時点で行う雇用状況報告(いわゆる「ロクイチ報告」)の評価は、2026年6月1日時点では従来の2.5%で行われます。つまり、制度上は約1年間の移行・準備期間が事実上確保されている状態です。

ただし、これを「まだ余裕がある」と読むのは危険です。障害者雇用は、求人を出してすぐ採用できるものではありません。自社に合う人材の確保、受け入れ部署の業務切り出し、職場環境の整備には数ヶ月単位の時間がかかります。「義務が発生する今」と「報告で評価される来年」のあいだの猶予を、準備期間として使い切れるかどうかが分かれ目です。

「来年のロクイチ報告までに、どこまで準備を進めるか」という逆算の視点を、今のうちから持っておくことが重要です。

4. 「合理的配慮」は採用後にこそ問われる法的義務

人数を満たせば終わり、ではありません。事業主には、募集・採用から入社後の業務遂行に至るまで、障害のある労働者がその能力を発揮できるよう、過重な負担にならない範囲で個別の調整・変更を行う「合理的配慮」の提供義務があります。これは法律上の義務であり、対応を誤れば紛争や訴訟に発展する場面もあります。

ここで一つ、経営者にお伝えしたい視点があります。障害者雇用の本質は「明文化されていない暗黙のルールに頼らず、誰にとっても分かりやすい職場のルールを整えること」「一人ひとりの特性や背景に配慮すること」にあります。これは、私が長く取り組んできた外国人雇用のマネジメントとまったく同じ構造です。多様な人材が安心して定着する組織をつくれる企業は、障害者雇用でも外国人雇用でも、そして採用競争全体でも強い。法令対応を「コスト」ではなく「組織を強くする機会」と捉え直せるかどうかが、これからの経営を分けます。

合理的配慮の検討プロセスや判断基準を社内で共有しておくことも、後々の紛争予防につながります。

5. 今週やるべき3つのこと

1. 再計算:自社の常時雇用労働者数を正確に出し、2.7%での必要人数を確認する

2. 棚卸し:現状の雇用障害者数・実雇用率を確認し、不足が出ないかをチェックする

3. 体制の点検:合理的配慮の運用、相談窓口、障害者雇用推進者の選任状況、受け入れ部署の業務設計、就業規則・社内規程への反映を見直す

ここまでできれば、「自社がどの位置にいるのか」が立体的に見えるようになります。

数字の確認だけなら自社でもできますが、「未達のリスク評価」「合理的配慮をめぐる紛争予防」「就業規則・社内規程への落とし込み」まで含めると、専門家と一度棚卸しをしておく価値があります。

当事務所では、障害者雇用・外国人雇用を含む「多様な人材が定着する組織づくり」を、労務・契約・行政対応まで一貫してサポートしています。初回のご相談はオンライン・対面いずれも無料です。御社の現状に合わせて、何をいつまでに行うべきかを整理します。

> 本稿は2026年7月時点の情報に基づく一般的な解説であり、個別の事案については結論が異なる場合があります。具体的なご判断の際は専門家にご相談ください。

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