2026年1月施行!改正下請法(取適法)への企業対応は もう時間がありません
手形払い禁止、価格協議義務化、従業員数基準の導入…
実務対応に精通した弁護士が、企業の「困った」を即座に解決します
施行まで残り 33日 企業実務に大きな影響を与える改正に、今から対応を始めましょう
2026年1月1日施行「下請法改正」の5つの主要ポイント
下請法は約20年ぶりの大改正を迎えます。法律の正式名称が 「下請代金支払遅延等防止法」から 「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」 へと変更され、通称「取適法」(中小受託取引適正化法)と呼ばれるようになります。
今回の改正では、単なる法律名の変更ではなく、企業実務に直結する 5つの重大な改正が含まれています。
① 適用対象の拡大 「従業員数基準」の新設
【旧法の課題】
従来の下請法は、企業の「資本金額」のみを基準として適用対象を判定していました。 これにより、資本金が少ないながらも実際の事業規模が大きい企業が 規制逃れをするケースが生じていました。
【改正内容】
改正法では、資本金に加えて「従業員数」も判定基準に追加されました。 これにより、以下のような取引も新たに下請法の適用対象となります。
資本金は1億円でも、従業員が300人を超えれば→委託事業者に該当
資本金が小さくても、従業員規模の違いで→規制対象に変わる
【企業への影響】
「従来は対象外だった」という企業でも、今後は規制対象となる可能性があります。 自社の資本金と従業員数を確認し、取引先との関係を整理し直す必要があります。
② 「手形払い」の全面禁止
【旧法までの扱い】
従来は、下請代金の支払いが60日を超える長期手形を禁止していましたが、 60日以内の短期手形や手形そのものは認められていました。
【改正内容】
改正法では、以下のすべてが禁止されます。
✗ 紙の約束手形→完全禁止
✗ 電子記録債権→支払期日までに現金化困難な場合は禁止
✗ ファクタリング→満額の金銭を得られない場合は禁止
✗ 振込手数料→中小受託事業者に負担させることも禁止
【企業への影響】
支払い方法を基本的に「銀行振込」に一本化する必要があります。 これにより、社内の経理・決裁フローの見直しが急務となります。
③ 価格協議義務化「買いたたき規制」の強化
【旧法までの規制】
下請事業者への不当な買いたたきは禁止されていましたが、 親事業者が「協議に応じない」という対応は、明確には禁止されていません。
【改正内容】
改正法では、以下の行為が新たに禁止されます。
✗ 中小受託事業者から価格見直しを求められたのに、協議に応じない
✗ 協議の場には出席したが、一方的に現在の価格を維持する
✗ 必要な説明をせず、子会社や系列企業との価格差を合理化しない
【企業への影響】
原材料費や労務費の上昇時に、下請事業者から価格協議を求められた場合、「協議に応じない」という対応はできなくなります。
企業は、以下の対応が必要になります
1 価格協議の記録(メール、会議記録)の保存体制構築
2 「価格を据え置く理由」の合理的な説明資料の準備
3 原価計算や市場価格との比較表の整備
④ 物流委託の追加 荷主から運送事業者への規制
【新設内容】
これまで下請法では、元請物流事業者が実運送事業者に再委託する場合のみが対象でした。改正法では、「荷主が物流事業者に直接委託する場合」も新たに規制対象に加わります。
【企業への影響】
自社の製品を運送事業者に委託する企業も、下請法の「委託事業者」として義務を負うことになります。
運送委託の規制対象判定基準
委託側(発注者) 資本金1,000万円超 または 従業員100人超
受託側(運送事業者) 資本金1,000万円以下 かつ 従業員100人以下
⑤ 行政監督体制の強化
【改正内容】
従来は「公正取引委員会」と「中小企業庁」が主に監督していましたが、 改正法では、業界ごとの「所管省庁」(国土交通省、厚労省など)にも 指導権限が拡大されました。
【企業への影響】
違反摘発が多面的に進められ、これまで「黙認」されていた業界慣行も 指導・是正の対象となる可能性が高まります。
改正下請法違反で企業が直面する5つの重大リスク
改正下請法の施行により、企業が違反した場合のリスクが大幅に 高まっています。単なる是正勧告にとどまらず、企業イメージの低下や 取引機会の喪失にもつながります。
リスク1 公正取引委員会による勧告と是正命令
下請法違反が認定された場合、公正取引委員会から「勧告」が通知されます。 改正法では、是正後であっても「再発防止措置」について 勧告できるようになり、監督が一層厳格化されています。
【企業への影響】
違反事実が公表され、企業ブランドがダメージを受ける
大手企業の取引先審査で「不適格」と評価される可能性
金融機関からの評価低下、融資への悪影響
リスク2 取引先との信頼喪失
「この企業は下請法違反の可能性がある」という評価が市場に広がると、 優秀な下請事業者の離脱や、新規取引先の確保が困難になります。
【具体例】
大手メーカーの下請企業が脱落
優良な専門技術者の確保が難しくなる
新規事業への参入が制限される
リスク3 顧客クレーム・SNS炎上
特に消費者向け事業では、下請法違反が報道されると、 顧客からの批判がSNSで拡大します。
【企業への影響】
商品・サービス購入の控え
企業イメージの長期的な低下
回復に数年を要する場合も
リスク4 労務トラブルの連鎖
下請事業者が経営危機に陥ると、従業員の給与支払い遅延が発生し、 労働基準監督署への通報や集団訴訟に発展するケースがあります。
【企業への影響】
取引先企業の経営難化による代金未回収
労働紛争への巻き込まれ
業界内での「問題企業」評価
リスク5 内部告発と社会的制裁
改正法では、内部告発者の保護規定が強化されました。 従業員から違反行為が告発された場合、 公正取引委員会の調査が直ちに開始されます。
【企業への影響】
従業員のモラル低下と離職
管理職の民事・刑事責任追及の可能性
企業文化の毀損
適切なコンプライアンス対応のステップ
【Step 1】取引実態の総点検(12月中に完了)
以下の項目を確認しましょう。
□ 自社が「委託事業者」に該当するか(資本金+従業員数の両面確認)
□ 取引先企業の資本金・従業員数の確認方法を整備したか
□ 現在の支払方法(手形比率、電子記録債権の割合など)
□ 価格協議の記録保存体制が整備されているか
□ 取引契約書が改正法の新要件に対応しているか
【Step 2】契約書・ひな形の修正(1月までに完了)
新たに盛り込むべき条項
✓ 「支払いは銀行振込により、60日以内に実施する」
✓ 「価格改定の申し入れに対しては、協議の場を設け、理由を説明した上で決定する」
✓ 「発注書・納品書等の書面交付」
✓ 「発生した費用増加分の協議プロセス」
【Step 3】社内教育の実施(1月〜3月)
対象部門 営業、調達、企画、経理
実施形式 集合研修 + 月1回のコンプライアンス会議
(テーマの例)
改正下請法の概要と禁止行為
自社が該当する取引類型と対応策
具体的な事例研究(違反事例から学ぶ)
【Step 4】継続的な取引先管理
取引先データベースの整備 (資本金・従業員数・取引内容の定期更新)
月次の価格協議記録の保存 • 支払実績の監視(振込漏れ、遅延がないか)
年1回の法令遵守状況の自己点検
