労働災害発生時の企業責任と損害賠償―リスク管理の視点から経営層が押さえるべき実務ポイント―

労働災害が発生した場合、企業経営者は深刻な法律的・社会的リスクに直面します。特に中小企業では、一度の事故が企業経営に大きな影響を及ぼすことも少なくありません。ここでは、経営層が知っておくべき企業側の責任と実務対応、そして法律事務所の活用メリットをご説明します。

1  労働災害発生時に問われる企業の責任

企業は、労働安全衛生法をはじめとする法令に基づき、労働者の安全確保に配慮する義務(安全配慮義務)を負っており、労働災害が発生した場合、損害賠償責任が発生する可能性があります。このような民事責任を含め、以下の四つの責任が問題となりえます。

  1. 刑事責任
    安全衛生管理を怠った場合、労働安全衛生法違反や業務上過失致死傷罪に問われる可能性があります。
  2. 民事責任(損害賠償責任)
    治療費、逸失利益、慰謝料などの損害について、会社が損害賠償請求を受ける場合があります。安全配慮義務違反や不法行為責任(民法709条)、使用者責任(民法715条)などが根拠となります。
  3. 行政責任
    労働基準監督署による是正勧告や作業停止命令等の行政的措置が取られることもあります。
  4. 社会的責任
    事故が報道された場合、取引先や従業員・社会からの信頼低下といった深刻なダメージを被ることもあります。

2  損害賠償請求の具体例と対応

労災事故が発生すると、労災保険により一定の給付がなされますが、全損害をカバーするものではありません。被災者や遺族からは精神的苦痛に対する慰謝料、休業損害、後遺障害逸失利益などの請求がなされる場合があります。これらの請求の成否や金額は、企業の安全配慮義務違反や事故原因の立証状況等によって大きく異なります。

3  トラブル未然防止と迅速な初動対応

労働災害に備えるうえで重要なのは、次のような施策です。

  • 日常的な安全衛生管理体制の構築と記録化
  • 就業規則や安全マニュアルの明確化、周知
  • 災害発生時の報告・対応フローの整備
  • 社内訓練や事故防止に関する定期的教育

仮に災害が発生した場合は、迅速に事実関係を調査・証拠を確保するとともに、関係当局への適切な報告・対応が不可欠です。また、「労災隠し」は厳罰の対象となるため、隠ぺいは絶対に避けなければなりません。

4  法律事務所の活用メリット

  • 事故発生直後の適切な初動アドバイス
  • 損害賠償請求対応や労災保険手続の全面サポート
  • 従業員対応、証拠保全、関係当局対応まで一貫サポート
  • 就業規則やマニュアル等の法的見直し、研修体制整備の支援

当事務所では、業種・規模に応じた労災リスクの診断、未然防止策、事故後の損害賠償・訴訟リスク対応まで包括的にサポートしています。法的支援の活用により、「経営資源を本業に集中できる」安心を、経営者の皆様にご提供します。お気軽にご相談下さい。

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