SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の普及により、個人の発信が企業ブランドに重大な影響を及ぼす時代となりました。従業員の投稿が原因で企業の社会的信用や情報セキュリティが損なわれるリスクは現実的に高まっています。一方で、SNSの正しい活用は人材採用やマーケティング等の業績向上にも直結します。そのため、“リスクは最小限・メリットは最大限”に活かすための利用規程や指導の重要性が増しています。
1 なぜSNS利用規程が必要か
SNSトラブルの多くは、個人の不用意な投稿によるものです。例えば、社内情報の漏洩、誤った企業批判、不適切な写真や言動、ハラスメント発言などが炎上や法的トラブルに直結します。退職者・内定者による暴露、業務関連の不満発信が企業価値を損ねることも多く見られます。SNSは会社とは無関係と思われがちですが、会社名・地名・写真・取引先など企業との関連性があれば、企業責任が問われる場合もあります。
2 SNS利用規程の策定ポイント
(1)目的・趣旨の明確化
企業としてSNS利用のガイドラインを設ける理由(情報漏洩予防・コンプライアンス遵守・ブランド維持等)を具体的に示し、従業員へ周知します。
(2)遵守事項の明記
・企業情報・個人情報の無断発信禁止
・差別・誹謗中傷・名誉毀損発言の禁止
・取引先・顧客等の情報漏洩禁止
・機密情報や営業秘密・ノウハウの適切管理
・業務上知り得た内容の無断発信・暴露の禁止
(3)個人利用と業務利用の区分
社内SNS(Teams、Slack等)と外部サービス(X、Instagram等)を明確に区分し、それぞれの利用可否・ルール・会社名の記載範囲等も策定します。
(4)違反時の懲戒規程・ペナルティ
違反内容に応じて厳格な措置(注意・減給・降格・懲戒解雇等)を明記し、抑止力を活用できるようにしておきましょう。
(5)投稿前の承認フローの導入
公式アカウント(広報・採用・商品紹介等)は、発信前に複数名の承認を経るフローを設けることで誤発信を防止します。
(6)退職・異動時の管理徹底
退職者・異動者のアカウント停止や誓約書提出を徹底し、会社情報・知財・秘密情報保全の観点からも必要不可欠です。
(7)指導・教育でリスクを最小化
規程を設けるだけでなく、定期的な研修・eラーニング・事例共有を通じて、SNS利用リスクや正しい運用方法を従業員に浸透させることも重要です。問題投稿の事例や炎上リスクの実例、個人と会社の線引きなど、わかりやすく実体験として伝えることで、従業員の理解・自覚が格段に深まります。
3 万が一トラブル発生時の対応
問題投稿が発覚した場合は、
・即時のアカウント停止・投稿削除
・事実関係の確認・証拠保全
・取引先・関係者への早期説明
・再発防止策検討と社内周知
が法的・社会的な被害最小化につながります。状況によっては、損害賠償請求や刑事訴訟への対応を検討する必要もあります。