企業活動の根幹を支える営業秘密・ノウハウは、企業の競争力の源泉であり、流出・漏洩によって莫大な損害が生じるリスクがあります。近年は退職者や外部委託、デジタル化・クラウド利用の拡大に伴い、情報の流出事件も急増しています。今回は、不正競争防止法に基づく法的保護と、実務での予防策をご説明します。
1 営業秘密の法的保護と3要件
営業秘密は、不正競争防止法で保護される秘密情報です。法的保護を受けるためには
・秘密性(厳格な管理がなされていること)
・有用性(事業活動上有用な情報であること)
・非公知性(公然と知られていないこと)
の3要件をすべて満たす必要があります。
この3点が確保されていなければ、漏洩しても法による救済を十分に受けられません。自社の情報が「営業秘密」に該当するか、現状で十分と言えるか、確認して見る必要があります。
2 流出防止のための具体策
(1)就業規則・契約管理
・秘密保持規程の明文化
就業規則や雇用契約、委託契約等で秘密保持義務・違反時のペナルティを明記し、従業員・取引先に周知徹底します。
・秘密保持誓約書の取得
業務関係者、特に退職者や異動者から個別の誓約書を取得し、法的措置への備えとします。
(2)人的・教育的対策
・定期的な研修・教育
営業秘密の価値と取り扱いルールを定期的に研修で再確認し、「うっかり漏洩」を防ぎます。
・退職・異動時の管理強化
アカウントの即日停止、私物クラウドやUSB提出のチェックリスト化等、退職処理を厳格化します。
(3)物理的・技術的な管理
・アクセス制限の徹底
情報資産台帳の作成、管理部門と閲覧権限の厳格運用。マル秘ラベル、保管場所の施錠・顔認証管理等。
・IT・クラウド対策
データ暗号化、パスワード管理、ワンタイムURLや期限付きアクセス、外部ネットワーク遮断等をルール化・点検。
・ログインに関する監視体制
アクセス履歴の定期レビュー、防犯カメラ設置等、情報流出の抑止・証拠確保に。
(4)秘密情報の管理・廃棄
・情報分類・管理台帳の整備
営業秘密と一般情報を区分し、誰がいつ利用したか履歴を残します。
・廃棄時の特殊処理・記録
廃棄は専門業者利用+復元不能な処理、回収・破棄記録も保存します。
3 流出発覚時の対応
万が一漏洩が生じた場合は、直ちに対応することが必要なのはいうまでもありません。
・流出経路・規模の調査
・証拠保全(PC・ログ・退職者の連絡履歴等)
関係者への聴取・退職者等への警告とともに、不正競争防止法による「損害賠償」や「差止め」請求、場合によっては刑事告訴を検討します。
営業秘密・ノウハウは企業の生命線であり、漏洩防止は全社的な取組みが必須です。「どこまで管理すれば法的保護が期待できるか」「規程や運用に不備はないか」「流出の疑いがある時の初動対応は?」など、少しでも不安を感じたら対応を検討する必要があります。
不正競争防止法による保護診断から規程整備・運用改善、内部教育、万が一の流出時の証拠保全・損害賠償請求・刑事告訴までワンストップでサポートします。
流出防止・万が一の対応を早期に講じることで、会社、従業員、取引先の未来を守ります。お気軽にご連絡ください。