取引先の倒産時に企業がとるべき対応策

企業活動において、取引先の倒産は決して他人事ではありません。特に中小企業にとっては、1件の未回収債権が資金繰りや経営の安定に大きな影響を及ぼすことがあります。ここでは、取引先が倒産した際に企業がとるべき具体的な対応策について、実務と法的観点の両面から解説します。

1 取引先の倒産情報を入手したら

まず、倒産の情報を得たら、速やかに取引先の実情を確認します。営業継続の有無や代表者の所在を把握し、現場に出向いて事実関係を確認することが重要です。倒産には「再生型(事業継続)」と「清算型(事業終了)」があり、対応方針が異なります。代表者が不在の場合は、債権者自ら破産申立てを検討する必要も生じます。

2 自社債権の把握と証拠の確保

倒産情報を得たら、まず自社が有する債権のリストアップを行いましょう。売掛金や手形債権などの種類や金額、契約書・請求書・納品書などの証拠書類、担保の有無を整理します。証拠の確保は、今後の交渉や法的手続きで非常に重要です。

3 取引停止・商品の回収・相殺などの初動対応

取引の停止や未納品商品の回収、代物弁済の交渉を早急に行います。買掛金等がある場合は、相殺権を行使して債権回収を図ることも有効です。納品済みの商品については、動産売買先取特権などの担保権を活用し、商品引き上げや差押えを検討します。

4 担保権・優先債権の行使

取引先との契約時に担保(抵当権、根抵当権、連帯保証など)を設定していた場合は、速やかに担保権を実行します。担保権は「別除権」として、倒産手続きに優先して権利行使が可能です。動産売買先取特権も、売主が商品代金を回収する有効な手段となります。

5 倒産手続きへの参加と債権届出

破産や民事再生などの法的倒産手続きが開始された場合、裁判所や破産管財人から通知が届きます。債権者は、定められた期限内に「債権届出書」を提出し、債権額や内容を主張する必要があります。これを怠ると配当の対象外となるため、必ず手続きを行わなければなりません。

6 配当・債権譲渡・貸倒処理

担保権がない場合は、手続き終了後に配当を受けることになりますが、配当率は低いことが多いです。回収困難な債権については、債権譲渡(売却)も検討できます。回収不能分は、税務上の損金処理(貸倒処理)も忘れずに行いましょう。

7 平時からの備え

倒産リスクに備えるため、契約書に相殺条項や担保設定、動産売買先取特権の活用など、平時からの法的対策が重要です。また、取引先の信用状況を定期的にチェックする体制づくりも有効です。

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