ビジネスにおいては、他企業と契約に至ることも大切ですが、戦略的に、また必要性の高まりに応じて、いかに迅速に契約関係を解消するか、また、それだけ機動的に取引先を機動的に切り替えられるかも重要であることは、言うまでもありません。
その意味で、契約の終了や解除の手続・条件を明確にしておくことは、トラブルを未然に防ぎ、事業の安定性を確保するうえで極めて重要です。特に、長期的な取引や継続的契約では、終了時の混乱や紛争が企業活動に大きな影響を及ぼすことがあります。
契約解除・終了の主な類型
契約の終了の仕方を分類すると、次のような場合があります。
1 合意解除
当事者双方が合意して契約を終了させる方法です。合意解除はトラブルが少なく、円滑な関係解消が可能ですが、そもそも、合意に至れるかが問題です。解除条件や手続きについて書面で明確にしておくことがトラブルを小さくすることにつながります。
2 法定解除
民法や契約書に基づき、特定の事由が生じた場合に一方的に契約を解除できる制度です。典型的な例としては債務不履行・契約不適合などが挙げられます。
3 約定解除
契約書にあらかじめ定められた事由(一定期間前の通知、特定の事象発生時など)に基づき、一方的に解除できるものです。民法・商法による法定解除では、対応策として不十分であるといったことは、多々見られます。
「当社としては、このような場合にも契約解除ができた方が好ましい」といったことがあれば、積極的条項化することを考えましょう。この場合も、通知期間や解除方法を具体的に定めておくことで、紛争予防につながります。
実務で多い解除・終了トラブルとその対策
解除は、それまで存した契約関係を断ち切る、双方にとって大きな影響を及ぼしうる制度です。そこで、契約で細かいところまでつめておかないと、トラブルが発生することがよくあります。
1 解除事由・手続の曖昧さによる紛争
解除できる事由や通知方法、通知期間が明確でないと、解除の有効性を巡る争いが生じやすくなります。契約書には、解除事由(債務不履行・期限の利益喪失・不可抗力等)や、解除通知の方法(書面・電子メール等)、通知期間(30日前まで等)を具体的に規定しておくべきです。
2 解除後の処理
契約終了後の金銭精算、物品や資料の返還、データの消去・移転などが明確でないと、追加紛争や損害発生のリスクが高まります。
3 中途解除・違約金の設定
長期契約や継続的契約では、一方的な中途解除が大きな損害を生むことがあります。違約金や損害賠償の規定がない場合、損失補填が困難となります。中途解除時の違約金や損害賠償の有無・算定方法を明示し、解除のハードルやリスクが適切かを検討するべきです。
4. 不可抗力条項
天災・パンデミック等の不可抗力事由による解除は、近年特に重要性が増しています。不可抗力の定義や解除手続きが曖昧だと、紛争の火種となります。