ビジネス契約の基礎知識  10 契約管理とコンプライアンス体制の構築

 最終回となる第10回は、「契約管理とコンプライアンス体制の構築」をテーマにご説明します。

 契約書の作成や締結だけでなく、その後の管理・運用体制を整備することは、企業のリスクマネジメントやガバナンス強化の観点から不可欠です。不適切な契約管理やコンプライアンス軽視は、重大な法的・経済的損失を招くリスクがあります。

契約管理の重要性

 契約締結後も、契約内容の履行状況や期限、更新・解除条件などを適切に管理しなければ、以下のような問題が生じやすくなります。

  1 契約更新や終了時期の失念による自動更新・解除漏れ

  2 契約違反や債務不履行の早期発見遅れ

  3 重要条項(損害賠償、秘密保持、競業避止等)の見落とし

  4 紛争発生時に証拠となる契約書の所在不明

 こうしたリスクを回避するためには、契約書の一元管理と定期的な内容確認が不可欠です。

契約管理体制の整備ポイント

1 契約書の一元管理

 紙媒体・電子データを問わず、契約書を一元的に保管・管理する体制を構築します。契約管理システムやクラウドサービスの活用も有効です。

2 期限・履行状況の管理

 契約の有効期間、更新・解除期限、定期的な義務(例:報告・検査・支払日)などをシステムや台帳で管理し、担当者が適時対応できる体制を整えます。

3 契約内容の定期的なレビュー

 法改正や判例変更、事業環境の変化に応じて、既存契約の内容を定期的に見直します。必要に応じて契約書の修正・更新や、相手方との再協議を行うことも必要な場合があります。

4 紛争対応・証拠保全

 紛争発生時に迅速かつ的確な対応ができるよう、契約書の所在や履行記録、やり取りの記録を整理・保全しておきます。

 契約管理システムや専門家の活用による効率化・高度化を推進しましょう。すべての契約書を結んで終わりという感覚で見ず、運用・管理・見直しのサイクルを社内に根付かせることが、リスク低減と企業価値向上の鍵となります。

 契約は企業活動の土台であり、適切な管理と法令遵守が持続的成長の礎となります。継続的に管理を進め。より安全で強固な契約体制を構築していきましょう。

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