フジテレビの事件で注目を浴びた「第三者委員会」とは

フジテレビにおける一連の問題で、第三者委員会の調査報告書の公表が注目を集めています。そもそも、報道によれば、今回の件では、2025年1月に行われた社長らの記者会見で、会社側が、事実関係を確認し、会社の対応が適切だったのかを検証するため新たに第三者の弁護士を中心とした調査委員会を立ち上げるとしながらも、その調査委員会が日弁連(日本弁護士連合会)のガイドラインにもとづく第三者委員会ではないと思う」としたことが、その後批判を浴びてしまったことの一つの要因になっているようです。

そこで、今回は、この第三者委員会とは何か、についてお話しましょう。

第三者委員会の目的と役割

企業が不祥事を起こした際、その原因究明や再発防止策を検討するために「第三者委員会」を設置する、などということを耳にすることが多くなりました。企業内部の者による調査では、どうしても独立性が確保できず、十分な公平性も期待できないのではないかが懸念されます。

そこで、外部の専門家による中立的な視点で調査を行うための機関として、「第三者委員会」を設置する、という発想になるのです。

一般に、第三者委員会は、事実関係の調査、原因分析、再発防止策の提言といった目的で設定されます。

日弁連「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」

独立性のか確保という観点から、第三者委員会の構成メンバーは、企業との利害関係を持たない外部の専門家が中心となります。もっとも、どのような状況で、どの程度の独立性が確保できればよいとするのか、法的にこれと定まった決まりがあるわけではありません。

信頼のおける独立性と中立性を確保するには、日弁連による「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」などが一つの目安となるでしょう。先のフジテレビ社長の発言は、第三者委員会を設置すると言っておきながら、敢えてこのガイドラインに基づくものではないとしたために、かえって、十分な調査がなされないのではないかとの懸念を生んでしまったようです。

日弁連の「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」では、第三者委員会の独立性、中立性について次の通り規定しており、かなり徹底したものとなっていると言ってよいでしょう。

1.起案権の専属

調査報告書の起案権は第三者委員会に専属する。

2.調査報告書の記載内容

第三者委員会は、調査により判明した事実とその評価を、企業等の現在の経営陣に不利となる場合であっても、調査報告書に記載する。

3.調査報告書の事前非開示

第三者委員会は、調査報告書提出前に、その全部又は一部を企業等に開示しない。

4.資料等の処分権

第三者委員会が調査の過程で収集した資料等については、原則として、第三者委員会が

処分権を専有する。

5.利害関係

企業等と利害関係を有する者は、委員に就任することができない。

大規模な調査がなされる場合には、多数の弁護士や専門家がサポートを行うこともあります。

大規模な調査では数億円規模の費用がかかる場合もあり、中小企業にとっては設置そのものが難しいケースもあるといった問題もあるものの、今回のフジテレビの事案は、第三者委員会が、企業の不祥事対応における決定的なツールにもなりうるものであり、その利用の適否が重大な結果につながりうることも明らかにしたものといってよいでしょう。

重大な不祥事が、自社には起こらないという保証はありません。

今回の件をきっかけに、自社だったらどのような場合に、どのように活用できるか、検討することは一考の価値があるものと思われます。

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