今回は、国際取引契約のポイントについてお話します。グローバル化が進む現代では、海外との取引が増加し、国内取引とは異なった問題が生じうることは、いうまでもありません。東日本大震災のときにも、不可抗力免責条項のあり方などについて、日本国内で用いられている契約書と、海外企業のひな形で非常に大きな違いがあることなどが注目を集めました。
国際取引契約に特有のリスク
1 準拠法
日本の商取引の在り方が海外でも通用するとは限りません。むしろ、各国の法律や商慣習は大きく異なることも多く、いずれによるかによって、トラブルが起こった際の対応が著しく異なることも少なくありません。
そこで、その取引に適用される法律(準拠法)を明確に定める必要があります。
2 法的概念の意味の違い
一見同じ意味に見える日本語と英語の法律用語について、解釈の仕方が違うこともあります。法的な用語の意味そのものが異なる場合のみならず、それぞれの国の文化的な違いにより紛争につながることもあります。
これに関連して、契約書が複数の言語で作成される場合には、どんなに正確に翻訳しようとしても、完全に内容を一致させることは不可能です。そこで、どちらの言語版を正式版とするか明記しておくことも重要になります。
3 管轄裁判所・紛争解決方法
紛争が発生した場合、どのような解決を図るかの問題です。訴訟等によるというのであれば、どこの国で裁判を行うかは非常に重要な問題になります。日本の裁判所で判決を得ても、相手方の国によっては執行出来ないこともあります。そもそも、国際取引においては、訴訟よりも仲裁が好まれるケースも多くあります。そのような場合には、仲裁に関する合意を契約に入れておくべきでしょう。他方で、仲裁は非常にコストがかかる場合もあり、訴訟を選びたいという場合もあるでしょう。
相手方の規模により、取引の種類により、相手方の国籍により、適切な紛争解決方法やその管轄を規定しておくことが大切です。
4 為替リスクや輸送リスク
国際取引では、国内取引とは異なる為替変動による損失も考慮しなければなりませんし、輸送中のトラブルが発生するリスクも国内取引とは大きく異なることも念頭におかねばなりません。
いかなる点に注意すべきかは、契約ごとに異なります。上に述べた特有の注意点も、その代表的なところを挙げたにすぎません。初めての取引、金額の大きな取引などに臨む場合には、国内取引と同様の感覚で「これくらいで大丈夫だろう」などと考えると、致命的な結果になることもあります。十分に注意して、条項を練っていきましょう。