弁当のチェーン店が、4月1日、公式Xで、店員の姿をしたキャラクターが頭を下げている様子も添えて、「全店舗にてライスの販売を停止します。誠に申し訳ございません」と投稿、「ライスの代わりといってはなんですが、おかずトリオやオードブルを購入いただけますと幸甚です」と、他の商品の購入を呼びかけたことが、物議を醸しています。「#エイプリルフール」とも記載されていたようなのですが、折からの米の高騰もあり、冗談とは受け取られなかったようです。
本件では、消費者が大きな損害を被るということはないかもしれませんが、一般論としては、エイプリルフールに会社がSNS上で嘘の発表を行い、それを信じた顧客が損害を被った場合、会社が損害賠償責任等の責任を負う可能性があります。
民事責任の根拠
不法行為を規定する民法第709条により、損害賠償責任が生じることがありえます。故意または過失により、違法に他の者に損害を与えた場合に、生じる責任です。
嘘の投稿によって顧客が無駄に交通費を支出した、というような場合には、この要件を満たすこともあるでしょう。
刑事責任に至ることも
状況によっては刑事責任が認められることすらありえます。例えば刑法233条の偽計業務妨害罪(刑法第233条)という犯罪は、虚偽の噂を流すなどして他の者の業務を妨害した場合に成立する犯罪です。嘘の投稿の内容によるでしょうが、それにより、他の企業の業務に支障が生じるなどすると、これに回答することもないとは言えません。
社会的責任の視点も忘れずに
もちろん、不適切な投稿により、一般消費者や取引先の不評を買うことが、企業にとって大きなリスク要因になり得ることは言うまでもありません。エイプリルフールだから何を言っても許されるというものではありません。
嘘を投稿するのであれば、明確に嘘と分かる表現にしてあるかとか、他の会社や個人に損害を生じるような内容でないかといった視点は、法的には必要でしょう。
法律問題とまではいかなくとも、企業のイメージを悪化させることが不買運動に発展したりすることもありえます。
エイプリルフールは、うまく活用できれば、注目を集めるツールたり得るかもしれませんが、だからといってすべての嘘が許されるわけではありません。失敗した時の危険性にも十分に注意を払いながら、活用するようにしたいものです。