今回は、ビジネス契約において実際に発生しやすいトラブル事例と、それに対する具体的な対策についてお話ししましょう。トラブルの態様は様々ありますが、類型的に起こりやすい典型的なパターンとしては、次のような例があります。
1 契約内容の解釈を巡る争い
契約書の条項が曖昧であると、当事者間で異なる解釈が展開され、スタック状態になることがあります。
「甲は、目的物が十分な品質があると認められた場合には、1週間以内にその代金を支払うものとする。」
十分な品質があると判断されるのはどのような場合なのでしょうか。また、誰が判断するのでしょうか。
できる限り、契約書には具体的かつ明確な表現を使用し、可能な限り基準や要件を示して、人により判断が異なるといった事態が生じにくいようにするべきです。少なくとも、判断権者が誰なのかを示しておくといった対応がないと、双方の主張が平行線になり、にっちもさっちもいかない、ということにもなりかねません。
2 履行遅滞その他の契約違反
期限になっても納品がない、納品があっても品質が不十分である、といった契約違反は、もっとも典型的なトラブルであることは言うまでもありません。
まず、不履行対策としては、履行遅滞等があった場合の遅延損害金などを設定し、先方に履行をするようにプレッシャーをかけることが必要です。
品質不十分については、契約不適合責任等の問題となりますが、民法の規定する履行の追完請求、代金減額請求等の条項を、いかに自社に有利な内容にしておけるかが重要なポイントになります。
このあたりは、契約書を作りこむ時の基本中の基本です。
3 秘密漏洩
契約を通じて先方に開示していた企業秘密が漏洩したとか、個人情報の漏洩といった事態は、今日的には極めて重大な問題として、企業に重大な損害を及ぼすと共に、信頼を一気に失うきっかけとなりかねません。
秘密保持条項(NDA)を契約書に入れるだけでなく、実際に漏洩があった際の調査等に対する協力義務を謳っておくなども必要です。
4 契約解除等のトラブル
こちらが安心していた契約関係が、突然切られた場合の影響が大きいことは言うまでもありません。どのような場合に、どのような手続で契約を解除できるのか、それは民商法の規定するところよりも厳しいのか否か。その辺りをつめて検討しておかなければ、突然の打ち切りの憂き目に遭うかもしれません。自社が解除されるケースが想定される契約では、解除の条件を如何に厳しいものにできるか、自社から解除するケースがより想定できる場合には解除の条件を如何に緩くできるか、が勝負になります。
5 準拠法・管轄裁判所の問題
国際取引では、トラブルが起こった際にどのような手続で解決を図るのかが重要な問題になります。準拠法や管轄裁判所が明記されていないとか、国際仲裁等の紛争解決手続きの規定が明確でないなどといったトラブルもよく見られるところです。
これらは、いずれも容易に想定できるトラブルの典型中の典型です。こういった点に対する契約書上の不備があっては、トラブルによる痛手を被るのも、自業自得と言わざるを得ません。
これから締結する契約のみならず、古い契約についても遡って、問題点はないか、トラブルが発生した場合に適切に対応できる内容になっているか、確認を怠らないことが必要です。